マクドナルドとカメ

昼休みの外出ついでにお使いを頼まれた。大通りに沿って駅とは逆の方向へ歩いていく。ここからは見えないけれど、道を逸れて左手側に下って行けば海岸が広がっている。でも、わたしは一度も行ったことがない。この町のあらゆる施設のシンボルマークは、海に関するものばかりだなと思う。駅前には、いつものドトールがある。ドトールに代わるものはありませんかと聞いたら、駅の逆の方向にはマクドナルドがあるよと教えてくれた。お使いに時間がかかってしまい、休み時間が30分ほどしかなくなった。戻るだけでも10分以上かかるだろうから、あと40分後に戻ればいいことに決めた。ショッピングモールの1階にマクドナルドはあって、1階のオープンスペースの、ごちゃごちゃにしか見えないイスとテーブルの奥にマクドナルドのカウンターが見えた。気分的にコーラを注文する。家族連れと中学生が、別々に勝手なことを大声でしゃべっている。マクドナルドはドトールに代わる場所ではないな、と気が付いた。となりの子供がアイスを食べながら、立ったり座ったり寝転んだりしている。一緒のおばあちゃんはあっちの方向を眺めて、ぼんやりアイスを形式的になめているだけで、子供にもアイスにも関心がないように見えた。子供はごろごろ転がっている。それを見ているわたしも、だからなんだ、と思った。落ち着かないので、そろそろ行こうと思ったら、スペースの向こう側に金魚屋が見えた。水槽が何台か店を囲むように置いてあって魚が泳いでいた。水槽の途切れた端っこから店内を覗いたら、帳場で頭の薄いおじちゃんが手元を見ながら何かしていた。自分の足元をみたら、緑のプラスチックのバケツに、大きなミドリガメが2匹向かい合って、静止していた。カメの体長に比べたら、バケツは小さすぎた。カメができることは互いにあと3歩後ずさるくらいで、少しのスペースしか残っていなかった。