小さな虫

小さな虫を五匹殺した。先日買ってきた、白い花が咲く植木鉢から発生する小さな虫が、目に余る。人の目の前をプンプン飛び回るので殺してしまった。叩かれた虫の死骸は、ほこりのように小さなゴミになってしまう。小さすぎて罪悪感があまりわかない。
今日は仕事が休みで、いつもより遅めに起きる。遅めだけれど、いつもの休みよりは早い。起き上がって部屋を仕切っている引き戸を開けたら、外れて倒れた。大きな音がしたので、Oさんも起き上がっておおーっと言っている。この引き戸はとても外れやすい。おかげで、目が覚める。
近頃、体調が良くないので病院に行った。検査を受けたら、大丈夫です・ホルモンのバランスです、と言われた。やはり、気のせいだった。帰り際、受付のおばさんになんでホルモンバランスがくずれるのですか?と聞いてみたら、困った顔をされてわかりません・心配だったらまた今度来た時に先生に聞いてください、と言われた。きっと、ストレスだろうと思ったが、食生活とかで治るんだろか。家に帰って、Oさんが作った焼うどんを食べた。胃の調子も悪いので、いつもより少なく食べた。そしたら、お腹が満たされなかったので、飴をなめてごまかすことにした。紅茶も飲んだ。腹八分目とOさんはよく言う。
買い出しに八百屋に行く。とても安い店なので、まとめ買いをしによく来る。うちにある野菜を思い出して、買う野菜を検討する。何種類かの野菜と、シイタケとシメジとマイタケを買った。キノコばかり、体調を整えてくれるかなと思って。帰り道、買った野菜を入れたバックを肩にしょって歩いていたら、若い男子学生が、アンソレイユ××というアパートの名前の発音をめぐって言い合いをしていた。アンソレイユだろ?ちがうよ、アンソレイユだよ。お前の発音はなまっているよ。私にしてみれば、アンソレイユだ、前の人のが正しい、日本においては。小さな坂の前の曲がり角で、子猫が捨てられたビニールの買い物袋をさぐっていた。ビニール袋に入っているのは飲み終わったプラスッチックカップばかりだし、子猫がかわいかったので、なにか食べ物をあげようかと思ったけれど、買い物バックに入っているのは、野菜の他はスモークサーモンで、スモークサーモンは量が少ないくせに値段が高い。高い、と思っていたら通り過ぎてしまった。
うちのアパートの斜め前のアパートのベランダには、同じ洗濯物がずっと干したままだ。数枚の黒いパンツ・黒いTシャツ・黒い靴下が色褪せて汚いグレーに変色してしまっているのが気になる。部屋に戻ったら、音楽が流れていて、私はこの曲は好きだなと思った。何の曲だ?と聞いたら、アンビエントという種類の音楽だそうだ。曲調が甘くなかったので私は好きだな、と思った。そのうち、子猫のことが思い起こされてきて、まだあそこにいるようなら、冷凍庫のサバの切り身を解凍して、あげようかなと思った。Oさんに見に行かせたら、もう子猫はいないようだった。もういないのに、あそこにサバを置いたらカラスにとられるに違いないと思ったのでやめておいた。スモークサーモンをあげればよかったと後悔した。でも、気にしないことにしようと思った。