93歳でした。

おとついの朝、祖母が亡くなった。
急いで身支度をして新幹線に飛び乗った。
悲しいはずなのに、ヨドバシでブローニーのフィルムを買ってこればよかった、とか
税金とかの書類を持って帰らないと、とか。
車窓からの風景を眺めながら、いい天気だなとか思ってしまった。


祖母が焼かれる前に、形として残っている内に写真を撮ろうと思って、
母達がお葬式の段取りをしている横で写真を撮った。
最後のお別れで棺に花を入れる時も写真を撮った。
骨も撮った。


写真を撮っている時は涙が全く出なかった。
写真を撮っていない時は涙が出るし、
写真を撮ろうが、撮るまいが、最後は絶対泣くと思っていたのに。


お釈迦様はこの世を無常だと言った。
常は無いのだと。
人は誰でも死ぬし、明日は自分が死ぬかもしれない。
それを仏となった祖母は身をもって教えてくれたんだよ、ということをお坊さんが話してくれた。


そういえば…
お通夜の晩、テレビではドリフのコント番組が放送されていた。
祖母はテレビの前に北枕で寝かされており、その祖母を挟んで
ひ孫たちがドリフを見て爆笑していた。
大人たちはその光景を見て「まさにコント」と言って笑い、
私は写真を撮った。
冷たくなった祖母だけが、妙にリアルだった。